HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



ゆずはまだ吠え続けているが、僕はその頭をちょっと撫で上げて宥めると彼女は静かになった。


僕は手摺りからちょっと身を乗り出して下を覗いても、暗い道路に人影は落ちていない。


やっぱり見間違い?


そうだよな。だってもう夜も10時を過ぎている。


彼の家は学校より向こう側だった筈。


「水月?」


背後で不思議そうに雅が首を傾けていた。


掃除機の胴体を引きずっている。


割れた破片を掃除機で吸うつもりだろう。


僕は振り返り部屋の中に引き返すと、「なんでもない」と短く返して窓を閉め、ついでにカーテンもきっちりと閉めた。




そう―――なんでもないんだ……




――――

――


だけど変な夢を見たからかな。


あの不思議で気味の悪い少年の声が―――久米の声に重なった。


久米の声ではないはずなのに。


いや、そうは言いきれないな。男なんて声なんて成長すれば変わるもんだ。


そんなことをぼんやりと考えていたから、


「あいつ久米……ホント何考えてるのか分かんないよ」と雅がドーナツにかぶりつきながら言い出したとき、


ドキリとした。




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