HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
――――
―
「この手紙なんだけどさ」
準備室で梶田と向かい合って座るのは何だか違和感があったが、
梶田は前置きもせずに“手紙”のコピーなるものをテーブルに滑らせて僕はその手紙を見て目を開いた。
“コレデ雅ハ僕ノモノダ オ前ニハ渡サナイ
彼女ノ前カラ消エロ
消エロ!”
悪意に満ちたその言葉は、僕の元に届いた手紙と同様新聞や雑誌から切り取られた文字を貼り付けてあるようだ。
「…これをどこで?まさか梶田に?」
僕が目を開いて梶田と手紙を交互に見ると
「それは久米んとこに届いた手紙だ。久米が読む前に鬼頭が取って
それを俺がコピーしたんだ。
久米はたぶんその手紙のこと、知らない」
と梶田は真剣な面持ちで頷いた。
この手紙が、久米に―――…
やっぱり久米はこの手紙の差出人じゃなかった。
「……この文面…同じような内容で僕の元にも届いた」
「は!?あんたんとこにも!」
梶田が目を開いて、僕は折りたたんだあの薔薇のシールの手紙をスーツの内ポケットから取り出して梶田に見せた。
梶田は僕の手からその手紙をひったくるようにして奪い、その手紙を凝視しながら文章を口に出した。
「鬼頭 雅ニ近ヅクナ
コレハ忠告ダ
コノ忠告ヲ無視シタ場合、命ハ無イ」
読み上げて、梶田はその意味を…差出人の意図をはかろうとするように唇を噛み、
結局差出人の真意を知ることはできなかったのか、
「くっそ!どうなってンだよ!」
ドンっ
テーブルに拳を突いて手紙を睨んだ。