HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「失礼…ちょっといいかな」
僕は話を中断する意味でちょっと手を挙げて梶田の方を見ると、梶田は少しだけ肩を竦めた。
ケータイを取り出してディスプレイを見ると、
“非通知”の文字が。
誰だ―――……
このタイミングで掛かってきたとなると、もしかしてストーカー犯か…
そう思って身構えながらも電話に出る。
『もしもし?神代先生の電話ですか?』
電話から聞こえてきたのは、抑揚のある男の声で言葉遣いは丁寧だった。
あまり感情の読めない淡々としたリズムと声。
声の感じからすると―――若い…久米や梶田とそう変わらない声だった。
それでも警戒しながら
「そうですけど、どちら様?」と何とか答えると、電話の相手は淡々とした同じリズムで
『……今は休み時間だと聞いてたので。
冬夜から』
と答えた。
冬夜……
久米から―――?
ドキンドキンと早まる心臓を抑えながら僕は何とか答えた。
「君は……」
僕の普通じゃない態度に梶田が訝しんだ様子で
「おい…誰からだよ」と僅かに身を乗り出した。僕は
「何でもない」と言うように手で制して送話口を手で覆った。
『はじめまして、と言うべきですか。
僕は右門です。
右門 篤史―――』
右門―――
二年前の事件に関与していて、更に昨日の事故のとき現場に居た男―――…