HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「君は……久米とは親しいのかな?どうゆう関係…?」
僕が聞くと、
『それは追々話しますよ。僕は冬夜の敵じゃない。
僕たちは……そうだな、
敢えて言うなら“同士”と言った言葉が一番しっくりくるかな』
右門 篤史は含みのある物言いをしたが、こちらを挑発しているようなあからさまな嘲笑をしたわけではなかった。
ただ悲しそうに無理やり笑っているように感じる。
話し方や言葉遣いから教養が高く、冷静さと……そして僕のケータイに直接かけてくると言う大胆さの絶妙なバランスを持っている。
それが正常な人間で、しかも頭も良い人間だと分かった。
「…おい!久米って…どうゆうことだよ!
あんた一体誰と話してんだよ」
梶田が身を乗り出してきたが、僕は再び手で制して唇に指を当てた。
「今は喋るな」と言う意味で。
『先生は冬夜の秘密を知ったようですね。
どうゆういきさつで知ったのかも彼から直接聞きました。
ねぇ先生。取り引きしませんか?』
「取り引き―――…?」
僕は目を開いた。
『そう、取り引きだ。
楠 乃亜に秘密を打ち明けないと言う約束ができるなら、
僕と…いや、僕たちと取り引きしましょう。
こちらの手持ちのカードをあなたに少しだけ開示しますよ。
それならどうです?
あなたはきっと分からないことだらけでもがいているはずだから。
どうです?あなたにとってこれは願ってもないチャンスじゃないでしょうか?』
持ち札を…手の内を僕に―――…?
「罠じゃないと言う確証は?」
『それはないですね。でも心配なら人の多い所で取り引きしましょうか』
僕は右門 篤史と名乗る人物の言葉に一つ一つ頷いた。
『授業が終わったあと、そうですね18時ごろ、駅前のSevenと言うファミレスでどうですか?
そこでお話ししましょう。
取り引きの内容を打ち明けるまで、決して楠 乃亜に冬夜の秘密を公開しないように。
そして先生お一人で来てください。
こちらからの条件はそれだけです』
喋り方、物の伝え方…淡々と…いっそ事務的とも言えるが、まったく隙がなく状況は明らかに向こうが不利だと言うのに冷静過ぎる態度が
少しだけ怖い。
感情で動くストーカー犯よりも、冷静で頭が良くて行動力のある右門 篤史と久米の二人が
怖い。