HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
僕たちの会話を聞きながら、梶田はかじりかけのパンを持った手を休めて俯いた。
「て言うかさ…俺らバラバラじゃん。
先生に危害が及ばないように取り計らったとは思うけど、神代先生は鬼頭と別れちゃったし、
ついでに言うと俺と林先生も鬼頭と絶交状態だろ。
そんで乃亜ちゃんは久米と手を組んでたっぽいし、
その乃亜ちゃんを楠(明良)先輩は疑ってるっぽいし…
もうメチャクチャだよ」
梶田は投げやりな感じで呟いて、最後に
「どうすりゃいいんだよ…」
と零しながら額に手をやる。
僕とまこは思わず顔を合わせた。
「確かに、俺たちの仲を混乱させて鬼頭を完全に孤立させるって言うのが犯人のもくろみならそれは成功したことになるな」
まこは軽く肩を竦める。それほど重大な事態とは思ってないようだ。
「問題はクラスメイトの中にストーカー犯の共犯者が居るってことだ」
「それより右門 篤史への接触の方が先だろ?
クラスメイトは逃げて行かないが、右門 篤史に接触するのは二度とないチャンスだ」
「久米の秘密を高値で競り落としてもらおう」
僕は冗談交じりにまこに笑いかけると、
「でも鬼頭の読みだと、乃亜ちゃんと久米は組んでるってことだろ?
俺カフェで見たけど右門 篤史もグルっぽいし。
なのに久米の秘密を乃亜ちゃんにバラすなって、どうゆうこと?」
梶田は難しい計算式を考えるように眉間に皺を寄せて難しい顔つき。
「久米は楠を完全に信用していないってことだ」
まこが肩を竦めて、梶田はちょっとイヤなものを見る目つきで腕を組んだ。
「嘘付きの騙し合いゲームじゃねぇか。
誰が本当のことを言ってるのか、俺にはさっぱり」