HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
その頃―――あたしは何かとつけて同学年の女子に呼び出されていた。
場所は大抵人けのない廊下とか、トイレとか。
「ちょっと!―――くんにちょっかいかけないでよ!リエが―――くんのこと好きだって知ってるでしょ!」
そのとき女子が言った彼の名前が―――――
思い出せない。
そう、美術バカはその当時クラスの女子はもちろんそれ以外に、他クラスの女子からも結構人気があったのだ。
あんなヤツどこがいいのか。だって美術バカじゃん?
そう思ったけど、それは心の中で留めておいて、
「んじゃ告白でもすれば?あたしは好きでもなんでもないし、ついでに言うとちょっかいかけた覚えはない」
そう言ってやると、女子は顔を真っ赤にして怒った。
「酷い!リエが可哀想だよ!」
なんて美しい友情。羨ましいわ。
なんてあたしが思うはずもなく―――
「勝手にやってな」そう返すと、女子たちはみんな揃って泣き出した。
それからあたしはクラスの女子からハブられて、口も利かれなくなった。
別にいいけどね。元々一人だったし。
それでも体操着を破られたり、靴を隠されたりする古典的ないじめにはさすがに頭にきたよ。
まぁあたしも若かったんだよね。
教師にチクる―――なんて陰険なことはしなかったけれど、かわりに現場を押さえてやった。
つまりはそいつらがあたしの机やロッカーに何かしているのを写真に収めてやったわけ。