HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
まこに突き飛ばされた梶田を支えると、僕は不穏な空気の両者の間に立ちはだかった。
「言い争いはやめだ。
ここで僕たちが仲間割れするのは、それこそ向こうの思うツボだ」
僕の言葉に、まこはちょっと顔に翳りを浮かべてふいと顔を逸らす。
「わり…ついかっとなって」
「いいよ。
梶田も……まこの気持ちも分かってやってくれないか?」
僕が眉を寄せて梶田を見ると、梶田は掴まれた襟元を押さえて小さく頷いた。
「千夏さんは実家に居る限り、大丈夫なのか?」
「100%とは言いがたいが、俺と一緒に居るより70%ほど安全だ」
「OK」
僕は事態を整理するように両手を軽く掲げて、
「まこの言う通り、ストーカー犯が捕まらない限り、
一度でも関わった者の誰もが危険な状況だ。
しかもこのストーカー犯は協力者も含めて少なくとも二人以上居る状態だ」
まこと梶田を見やると二人は無言で頷いた。
「ストーカー犯は幼稚で感情的な部分がある一方、僕のクラスの生徒を利用して僕たちの間を混乱させようとしている、狡猾で卑劣な部分を持ち合わせている」
「単なるバカじゃないってことか?」
梶田が不安そうに聞いてきて、僕はそれに無言で返した。
「しかも二年前の事件に関わっている久米と、右門 篤史はどうやら二人で組んで行動しているようだ」
「今回の事件では敵か味方かまだクリアじゃねぇな」
今度はまこが口を挟み、僕はそれにも無言で頷いた。
「しかし楠が久米の手助けをしていることを考えると、ストーカー犯が久米でないことは分かる」
「右門 篤史も消えるな」
「そうなるね。だけど単純な消去法じゃ犯人は割り出せない。
まずは情報を得ることにある」
僕が二人を見ると、
「やっぱり右門 篤史と取り引きするのが一番早いな」
まこが腕を組んで僕を見てきた。