HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「なぁ、右門 篤史と取り引き…って。
先生は久米の何の秘密を知ってるんだよ…」
唯一、この事態の全容を知らない梶田が僕を見ていて、僕は思わずまこに目配せ。
まこも久米の秘密を知っているが、直接久米に秘密を知っていると詰め寄ったのは僕だ。
今、梶田に言ったら右門 篤史との取り引きが成立しないかもしれない。
だがいつもは「何だよ」と食い下がってくるところを、梶田は納得したように
「言ったら取り引きできなくなるかもしれねぇしな。
言うわけにはいかないか…」
とつまらなさそうに呟き、首の後ろに手をやった。
「梶田……すまない」
申し訳ない気持ちで謝ると、梶田は小さく吐息をつき
「仕方ないよ。今は右門 篤史との取り引きが一番大事だし」
と言って頭の後ろで手を組む。
「隠し事されてるのは気持ちの良いもんじゃないけどな」
「嘘つきの騙し合いゲームだ。梶田、ここで話した内容は…」
まこが言いかけて、
「分かってるよ。俺、誰にも言うつもりはねぇし。
もちろん、鬼頭にも」
と梶田は大きく頭を振った。
僕はテーブルに放り投げられているトランプ…あの“Joker”のカードを手に取った。
どこにでもある赤いマジックペンで書かれていそうだ。
「字の感じからして女子……?」
「きれいな方だけど、男かもな」梶田も覗き込んできて、
「警察じゃあるまいし、筆跡鑑定なんてできねぇよな」
とまこ。
カードを裏返して千夏さんの写真が貼られてる面を見る。
恐らく隠し撮りだろう…千夏さんは遠くで、どこかの扉を開いているところだった。
カードに貼り付けてあるから凄くちっさくて、僕は目を細めてその光景を眺めた。
「これ…まこのマンション」
「そうだな。ちっ、どこまで調べやがったんだよ。
気持ち悪いヤツめ」