HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



結ちゃんは青竹色の地にローズの花をプリントしてある、ちょっと変わったデザインのワンピース姿だった。


服のせいか、それとも……少し化粧をしているせいか、いつもより大人っぽく見える。



「先生、誰かと待ち合わせ?」


結ちゃんが聞いてきて、


「あー……うん」


僕は曖昧に頷いた。


マズい。


結ちゃんが居ると、右門 篤史が接触してこないかもしれない。


「うまくいってない彼女?」


僕の落ち着かない態度を見て、結ちゃんが苦笑を浮かべる。


「いや!そんなんじゃないよ。ちょっとツレが…」


言いかけて僕は腕時計を見た。


時間は18時ぴったり。


僕のこめかみに冷や汗が流れ落ちる。


ドキン、ドキン!と心臓だけが音を立てて進み行く秒針よりも早く打っている。


「…ごめん、ちょっと今日重要なことが…」


結ちゃんに言いかけたときだった。


ドン!


道行く誰かが突っ立ったままの結ちゃんの肩にぶつかり、華奢なヒールのブーツを履いていた結ちゃんが軽くよろけた。


僕が慌てて彼女の腕を支えると、そのつぶかった相手が謝罪のつもりなのか僅かに頭を下げて結ちゃんにそっと何かを言った。


細身の男で目深にキャップを被っているから顔は見えない。


でも着ている服や背格好から若いと言うことは分かった。


何かを言われた結ちゃんが目を開き、


「え…ちょっと…!」と


彼の後ろ姿を目で追いながらまばたき。


やがて怪訝そうに僕に視線を移すと、





「さっきの人……“先生に伝えて。って




取り引きは中止だ”って」








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