HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
ゆっくりと視界が歪んでいく。
あいつが見せてくれた“サルバドール・ダリ”の代表作“記憶の固執”の歪んだ時計みたいに、景色がぐにゃりと歪んで何もかもがねじれていく気持ち悪い感じ。
あたしあの絵結構好きだったんだけどな…
って今はそんなことどーでもいいか。
ここどこ?
目を開けるとそこは薄暗い道路だった。
どこかで見た景色だと認識して、どうってことない、それは中学校からの帰り道いっつも通っていた道だった。
そのアスファルトに人の影が伸びている。
二人……いや、三人分ある。
「雅。君はボクのものだ」
暗い背景で顔は見えないけれど黒っぽいフードをかぶった男が一人、手にナイフを持ってこっちに向かってくる。
その声はそいつの手に握られたナイフと同じぐらい鈍くて、狂気に満ちていた。
あたしはそのナイフの鈍い切先を目を開いて凝視するしかなかった。
やめろ―――!!!
誰かが叫んだ。