HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
■Chairs.17
■Chairs.17
◇◇◇◇◇◇◇◇
あたしと久米は、彼のベッドに並んで座り、それぞカフェオレとホットコーヒーを飲んでいる。
「てかさー、美術バカ。あんた何でそんなにデカくなったの。昔はあたしと並ぶぐらいだったのに。
声も低くなって。
可愛さの欠片もないじゃん。
見た目も中身も」
体育座りをしてカフェオレのカップに口をつけると
「そりゃ二年も経てば男なんて成長するよ」
と久米は苦笑い。
「……二年間…どうしてたの?」
気になってたことを聞くと、
「母親が亡くなるまで母親の実家に。叔母夫婦と従兄妹もいたから結構楽しかったよ」
久米が『楽しかった』と言うのは、本当だろう。
「俺は一人っ子だったからさ、従兄妹たちが兄弟みたいだった。
はじめてできた兄妹。特に妹の……真愛は可愛かった」
「何、あんたシスコン?」
冗談ぽく言ってやると、
「鬼頭さんもシスコンじゃん。楠さんにべったり」
と返された。
「べったりって程でも…」
「だからさ、彼女を巻き込んだときは、ホントに申し訳なく思った」
顔を上げると、久米は「申し訳なく思った」と言う言葉以上に苦しそうに眉を寄せ、口元に強引に笑みを浮かべていた。
「いいよ」
あたしはその顔を見ないようにして、カフェオレのカップに口を付けた。