HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
目の前が一瞬真っ暗になって、恐る恐る目を開けると、
視界には赤い絵の具をたらしたような鮮明な血の色が広がっていた。
な―――……に―――!
何が起こったのかわからず、あたしは頭を抱えてその流れる血を凝視するしかなかった。
すぐ耳元で誰かが怒鳴るような、大声で何かを叫んだ。
忘レロ!
忘レルンダ―――
コンナコト―――忘レテシマエ!!
――――――……
「―――っは!」
あまりにリアルな夢にあたしは飛び起きた。
何!何があったの!?
夢なのか現実なのか、目覚めたばかりでそれは混ざり合い、あたしの中を混乱に満たしていた。
手のひらを見つめたけど、そこには何もない。
あの視界を覆うような鮮明な赤色も。
周りの景色も、あの男の姿も―――
肩で息をしながらも、あたしは額に手を当てた。
そこにはうっすらと汗をかいていて、いやな感触を覚えた。
「―――………夢?」
ぽつりともらして、隣を見ると枕を抱きしめながら水月が心地良さそうに寝息を立てていた。