HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


昨夜は―――水月の部屋に泊った。


彼の腕の中で眠った。これからしばらく会えないから、寂しさを埋めるために


彼にしがみつくようにして、眠りについた。


そうすれば夢でも水月に会える気がしたから―――



でも実際に見たのは―――悪夢だった。



心地よく眠る水月を起こさないように、あたしはそっとベッドを降りた。


わずかに頭痛を覚えて視界がぼんやりとしているし、足取りはふらふらする。


お酒なんて飲まないけれど、二日酔いとかこんな感じなんだろうか。


重い足取りで何とか洗面所に歩いていくと、冷たい水を顔に浴びせた。


ザー……


水の流れる音が心地いい。


何か―――落ち着く…


水は、水素と酸素の合体であり、化学式はH2O。


すべての既知の生命体にとって、水は不可欠な物質であり、生物体を構成する物質で、最も多くを占める。


人体も60%から70%程度が水だ。


水は人類にとって身近であり生物の生存に必要な物質。


前のあたしならそんな理屈でものを考えていただろうし、この心地良さをそう説明して割り切っていただろう。


でも今は違う。





水は―――愛する人の一部だから。




だからこんなにも、心が和らぐんだ。









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