HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
―――…!
僕は目を開いてその場でまたも硬直した。
な、何か言わなきゃ……そう焦っていると
『…もしもし?』と少し不機嫌そうな声で聞かれた。
「あ…えっと……まこのケータイに掛けたつもりなんだけど…」
『保健医に?これはあたしのケータイだよ』
そう言われて、僕は一旦耳からケータイを離してディスプレイを覗き込むと、
通話:雅
と、なっていた。
無意識―――って怖いもんだな。
習慣か、それとも潜在意識の中で、雅の声が聞きたいと思っていたからだろうか。
『間違い電話。相変わらずだね』
雅が電話の向こうで小さく笑う。
『相変わらずおっちょこちょい』
以前と変わらない雰囲気に、一瞬何もかも取り戻せる気がした。
「雅―――…」
言いかけたが、
『早く保健医に掛けなおしたら?』
と、そっけなく言われ、切られそうな雰囲気。
「いや!君でもいいんだ。
あの……コンタクト…!」
そう勢い込むと、
『コンタクト?』
雅が訝しそうに返してくる。でも切られる気配はなかった。