HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




「…ツレがコンタクト落としちゃって、その場では見つからなかったんだけど後から僕が見つけたんだけどさ…


どうやって保管すればいいのか分からなくて」


僕は上ずった声で何とか説明。


ツレと言う単語を強調したのは、どこか後ろめたい気持ちがあったからだ。


『…ああ、そゆうこと。ソフト?ハード?』


そう聞かれて


「ソフト…」と答えると


『専用のコンタクト洗浄液じゃないと保存できないよ。


水月の……先生の洗面所に保存液とケース置いてあるから、使っていいよ…』


そっけないがちゃんと答えてくれた。


雅の……彼女の生活の痕は所々点在している。


それは教室の中―――教師と生徒と言う一線を越え、僕たちが愛し合ったという軌跡。


点と点を結ぶように、それは形を成し


やがては記憶の一片として脳に刻まれる。


教科書でも教えてくれなかった愛の数式が、僕の頭に浮かび上がり、何だか胸がよじれそうに痛い。





人を愛することがこんなにも痛いことなのか。



誰も教えてくれなかったし、誰も教えられることじゃないのだ。



ぼんやりとそんなことを考えながらも、言われた通りきちんとコンタクトの保存ケースに仕舞い入れる。





『水月』





ふいに名前を呼ばれた。









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