HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
ケータイを降ろしてどれぐらい経っただろう。
ゆずがおやつのおねだりをして(さっき食べたばかりなのに)僕の足元をまたもくるくる回っている。
僕は彼女のすべすべした頭部をそっと撫でた。
「ゆずはさっき食べたでしょ?」
宥めるように言うと彼女はくぅんと鼻先で鳴き、だけど次の瞬間まるで待っていたかのように
「ワン」と小さく吼えた。
それと同時だった。
~♪
楠からのメールが届いて僕は目をまばたいた。
ゆずは―――メールが来ること知ってたのかな…
動物って人に感じない何かを敏感に感じ取ることができるみたいだし。
不思議だ。
楠とは―――準備室で変な別れ方をして以来喋っていない。
向こうが僕を避けているようで視線が合ってもあからさまに視線を逸らされていた。
今更僕に何の用だと言うのだ。
それともまた何かを企んでいるのだろうか。
色んな気持ちがないまぜになって疑心暗鬼になりながらも僕はそのメールを開いた。
「Fw:??転送メール?」
だけどその転送メールの内容は僕の疑いや不審な気持ちを一掃するような内容が記載されていた。
"バトンのアンカーは先生です。確認したら林先生へ”
最後に楠のメッセージが添えられていて、僕は慌ててまこにメールをした。
“これって本当?”
それから数十分後に
“鬼頭の案だ、明日はよろしく”と返信がきた。
『待ってる』
雅の言葉を頭の中で反芻する。
「ああ、必ず」
僕は一つ頷いて、ゆずも同意しているのか「ワン」と一声吠えた。