HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
「裏方かぁ。それも大変そうだね」僕が苦笑いを漏らすと、
「でも手先が器用で凝り性だから、セットとか少ない予算で結構本格的なものを作ってくれるんです。前回公演したロミオとジュリエットの背景セット、あれは本格的でみんなびっくりしてましたよ」
と女生徒は気を許したように笑った。
僕は彼女に礼を言って、その場を立ち去った。
久米は部活動をそれなりに楽しんでいるようだった。
でもそれが何だ。
それだけじゃ何も分からない。
もやもやしていてもそこから何かが始まるわけではない。
僕は考え方を少し変えて、再び職員室で調査票を開いた。
住所は、車で行けばこの学校から10分と離れていない。
行ってみる…か。
そんな風に考えること自体今までになかった。
どんなことでも流れに身を任せている、いわば受け身の姿勢だったのに、今はこの行動力。
僕を突き動かすのは何か―――
それはきっと彼女―――雅の存在が大きく影響しているのは
否定しようがない。