闇を纏う(恋愛ミステリ)

2

[神崎コーポレーション]

雑居ビルの3Fにその会社はあった
案内板で会社の存在を確かめると、純はその場から少し離れ、携帯を取り出した

あの夜の被害者、山田孝はこの会社に勤めていたと殺し屋に聞いた

表向きは不動産を扱う会社だが、実際は暴力団のダミー会社だと

― 暴力団

まったく関わりのない世界だ
だが、あの黒い車であたしを拉致しようとしたやり方を考えれば、暴力団と考えた方が頷ける

しかしなぜ?

純は首を振った
(いま考えても仕方ない)

暴力団と聞いた時、当然恐怖にかられた
誰か大人に助けを求めたかった
でも・・・親や教師に相談した所で、結局は警察に任せる事になる
そうなれば事情を説明する時、殺し屋の事も話さざるを得ない

― それは出来ない

自分でなんとかするしかないのだ

純は殺し屋に協力してもらう事は考えていなかった
“人を殺す事を生業としている”
最低だ
そんな人間とこれ以上関わるべきじゃない


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