闇を纏う(恋愛ミステリ)
「どうして今の職業についたの?」

言葉を選び、あえて[職業]という言い方にした
殺し屋は無言で歩いている

「貴方ならもっと別の道があると思うんだけど」
純は構わず話を続けた
「そうだなぁ・・・。ルックスを生かしてモデルとか?あと車の運転上手いからカーレーサー?」

殺し屋は振り向きもせずに歩き続けている
「今の仕事なんて危険なだけだし、別の道に進んだ方が・・・」

純は殺し屋の肩が少し動いたのに気付いた

(・・・笑ってる!?)

殺し屋が軽く振り向く
「さすが生徒会長だな、立派な御高説だ」
「な、なにかおかしい?」
純がムスッと頬を膨らませる

内心は返事をしてくれたのが嬉しかった

「女子高生に説教される暗殺者。面白くないか?」
「う〜ん、そういえば・・・」
改めて考えてみて、思わず純が吹き出す

殺し屋が再び前を向く
「変だろう?わかったら質問タイムは終わりだ」
「変・・・といえば変だけど」
純は話を続けたかった

― ふいに殺し屋が立ち止まる

「どうしたの?」
純が殺し屋の視線の先を辿る


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