森の中の
ギュ、と温かい何かに包まれて、頬はなにか硬いものにぶつかって、
それがヨウ兄の胸板だと気付くのに、しばらくかかった。
「…えっ、え? ヨ…ヨウ兄?」
モゴモゴとヨウ兄に埋れながら話しかけると、
アヤネ…と、ヨウ兄は小さな小さな、まるで泣いてるみたいな声を出した。
「俺だって…俺だって、お前の事が大好きだ。
トロいとこも、人間や生き物全部に優しいとこも、白い肌も、柔らかい髪の毛も…
俺が何度お前のその長い髪を乱してやりたいと思ったか知ってるか?」
でも、だめなんだ…
ヨウ兄は弱々しくそう囁いた。
「お前が大切なんだ。 俺なんかの手で、お前の人生を壊せない。お前が好きで、大切すぎるから、だから、だめなんだ…。」
もう、泣きすぎて、何がなんだかわかんないよ。
「アヤネ、前を向いてくれ。 お前ほど大切な奴は他にいない。 だから、幸せになってくれ。 俺じゃない、他の奴の手で。」
「ヨウ兄っ…‼」
ヨウ兄の気持ちが、痛いほど流れ込んできて、愛しくて、息が出来ないくらいに泣いたよ。