森の中の
「おい、いい加減起きろよ。」
「ぎょわーっ‼」
さっきまで追いかけてた人が目の前にいて、
思わずベッドから落ちそうなくらいびっくりしちゃった。
「お前、もちょっと色気ある声出せよな。」
年頃の女がそんなんで大丈夫かよ。
と、形のいい眉毛を寄せる。
どーせ、大学生になっても彼氏もいませんよーだ。
でも、ずっと居ない訳じゃないもん。
何人か付き合ったけど、すぐに違うな、って別れちゃっただけで。
朝っぱらからシャワシャワとセミがうるさく鳴いてる。
この、安眠妨害‼
まあ、11時を朝と呼ぶかは、人によると思うけど…
てゆーか‼
「ヨウ兄‼ なんでここにいるの!?」
2つ年上のヨウ兄、ことヨウヘイ兄ちゃんは、
大学進学と共に1人暮らしを始めたんだ。
出てっちゃった時は、さすがに家が広くなったな、って
ちょっと寂しくなったけど。
それももう、3年前のことだ。
「おう。お前、ヒマだろ。キャンプ行くぞ。」
あたしの質問には答えずに、ヨウ兄は言った。
「は?キャンプ?…いつ?」
「いま。
後30分で出るから、早く用意しろよ。」
ったく、お前全然起きて来ねーからこんな時間なっちまったぞ。
と、ヨウ兄はぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。