DISGUISE

玄関の施錠をすると､ちょうど仕事に出る隣人に出くわした｡

｢あら？佐藤さん!?｣

由紀は軽く微笑みながら会釈した｡

｢はい､おはようございます｡｣

隣人は驚きの表情を隠せなかった｡

｢まぁ！すっかり見違えちゃって｡あ､この間の小包…もしかして何か良い美容器具でも見つけたの？｣

隣人は遠慮なく由紀の顔を､まじまじと眺めた｡

何か不自然なところでもあったらどうしよう…

由紀は内心不安であったが､それは杞憂に終わった｡

｢でも､そんな短期間に変わる訳ないし､メイクも薄いし…貴方いつも暗い顔をしてたから気付かなかったけど､きっと元が美人だったのね｣

言ってから､しまったという顔をした｡

｢あ､ごめんなさい｡私ったら失礼な事を…｣

由紀は顔に全く問題がないのを確認できて､安堵していた｡

｢いえ､それじゃ出掛ける時間なので…｣

再び軽く会釈して踵を返した｡

本心では矢継ぎ早に言葉を羅列する隣人に困惑していたので､話を打ち切るタイミングが訪れた事にホッとした｡