DISGUISE
その様子が可笑しくて、くすくすっと軽い笑いを洩らすと、守衛は我に返り、真っ赤になって俯いた。

「ど、どうぞ。結構です」

予想以上の反応に、更に確信と自信を深めた。

今の私は誰が見ても、間違いなく美しいのだ。


ここでもやはり注目を浴びながら、上階へのエレベーターに乗り込み、程なく自分の所属する部署へ到着した。

普段なら誰にも気付かれないようにそっと扉を開け、申し訳程度の小声で挨拶をする。
そして皆も気付かなかったかのように、由紀の方をちらりとも見ない。

そこには、まるで暗黙の了解でも存在しているかのようだった。

< 22 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop