コントラスト
檻の外
「杏梨ぃ〜〜〜‼」
「ママ‼」
カツカツと高いヒールを鳴らして病室に入って来たのは私のママ。
妃塚 瀬里
ひづか せり
数年前に自らのデザインを置くジュエリーブランドを設立。
その知名度はぐんぐん広がり、今では幅広い世代から強く指示される超人気の有名美人ウーマン!
…って、美代ちゃんが前に騒いでた。
美代ちゃんは、社会人としても、女性としても、ママを尊敬しているみたいで、そんな人はたくさんいるらしい。
「退院、おめでとう‼さすがあたしの娘!よくぞ勝利した!」
テンションが高くて、若々しいママ。
私も、そんなママを憧れにしている一人。
「パパも夕方には帰るって!シェフにごちそう頼んできたわよ~!!」
「ほんとっ?ごちそう♪」
「杏梨ちゃん…そこはパパ♪、て言うトコよ、きっと」
「杏梨の好きなシチューもあるわよ‼」
「わぁい‼」
「(似た者親子…)」
美代ちゃんの冷静な突っ込みを聞こえないふりして、今ここにいないパパを弄る私とママ。
今ここにいたらいじけてるだろうパパ。
最後には、顔を見合わせて、みんなで笑って…
それが私の大好きな家族で、きっと、これからたくさん見れるであろう大好きな光景。
そう思ったら、二週間前いっぱい流して、枯れたはずの嬉し涙が、また零れそうになって、誤魔化すように笑う。
一緒に笑ってるママも、
私たちをみて呆れているふりしてる美代ちゃんも、
きっと、そんな私に気づいていた。
嬉しすぎるよ。
いつも帰れても夜の11時なのに。
…仕事はいいの?
社長でしょ?
ママだって、今、新しいジュエリーの話で忙しいんじゃなかったの?
パパも、ママも、親バカすぎるよ。
とかいう私は、ファザコンでママコンだ。