可愛くない同居人。
予想はしていたけど、人が多い。
少しでも目を離すとはぐれてしまいそうである。
「あ、すみません」
肩をぶつけてしまった。
「え、あ、り、凛!?」
聞き慣れた、僕の好きな、あの人の声。
ぶつけてしまった人に視線をやると、やっぱりあの人だった。
「なんで、凛がここに」
それはこっちのセリフだ。
そう言おうとしたけど、言えなかった。
それどころか、まるで言葉を忘れたかのように、僕の口から何も発せられなくなった。
なぜなら、
「・・・凛?」
首をかしげて、心配そうに僕を見上げる、この人は、淡いピンクの桜が散らされ
た浴衣を着ていて、あまりにも
「・・・かわいすぎます」
「え?ごめん、今なんて」
顔が、体中が熱い。
絶対僕の頬は今赤いだろう。
そんな姿を見られるのが恥ずかしくて、僕は、手のひらで口元を覆い、顔を背けた。