可愛くない同居人。

けど、当然そんなことは恥ずかしくて言えるわけがない。



「ただの、知り合いですよ」

そう言ってこの場を流そうと思った。

「えー、ほんとかよ!?」

健はちょっとガッカリという感じで肩を落とした。

「本当です」

そう返事をして、あの人に視線を戻すと、ギョッとした。

なぜなら、うっすら目に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな顔をしていたからだ。


「あの・・・」

どうしたんですか、そう聞こうとした時、言葉を遮られた。

「あ、いたいた!薫ー!」

あの人の友達だろうか。

女の人が二人、こっちにむかって手を振っている。

あの人は、無言で二人の元に駆けて行った。

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