可愛くない同居人。
小さな静寂が、部屋のなかを満たす。
先に口を開き、静寂を消し去ったのは、凜だった。
「あの、いつまでここにいるんですか?」
いつもの嫌味は一切含まれておらず、純粋な疑問のように思われた。
「凜の体調が良くなるまで、かな?」
「あなたがいなくても、良くなります。僕は一人でも大丈夫です。だから、自室に戻って下さい」
心配するな、自分の時間を大切にしろ。
そんな風に気を使ってくれているのが分かった。
私はにっこりと微笑んで首を横に振る。
「いいえ。凜が元気になるまで、そばにいるよ」
「なんで・・・」
「凜が心配だし、ちょっとでも長く一緒にいたいから」
「・・・変な人ですね」
「なっ!?」
言い返そうとした時、凜の冷たい手が、私の頬を優しく撫でた。
「ありがとうございます」
私はその手を握りしめ、「どういたしまして」と言った。