とある霊能力者の仕事
彼女の全身を覆うように、ぽっかりと開いた口の中。

彼女はまさに、口の中に入っていました。

そしてそのモノは黒い顔、みたいなモノ。

はっきりと言えないのは、口以外、顔のパーツが無いからです。

目も鼻も耳もなし、体も無いんです。

ただ彼女の全身を今にも喰らおうとする黒いモノ、それを背負いつつも微笑んでいる彼女に、わたしはぞっとしてしまいました。

「ん?」

わたしの視線に気付き、彼女は自分の背後を振り返りました。

「…ああ、失礼」

呟くように言うと、片手で自分の肩をパンパンと叩きました。

すると黒きモノは、スゥ…と溶けるように消えてしまいます。

「えっ…?」

呆然と呟くと、彼女は再び笑みを浮かべました。
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