マンション住民’s
「はぁ~っ」
俺は、立ち止まって煙草の煙を吐き出し、そのついでに溜め息を吐いた。
白い息が、煙が、顔を隠すように広がる。
もう既に家の前。
というより、アパートの前。
それを煙で隠し、一階の右から二番目、左からも二番目だけど、扉に向かって再び歩き出す。
「ぼっろいアパート……」
ふと呟いたその言葉。
別に嘘を言ったつもりじゃないけど、頭に思った言葉が口から漏れた。
ガチャガチャ、そんな音が俺の右側から聞こえた。
でも、俺はその音を無視して自分の部屋の扉に手を掛ける。
「んーむわっつあー!」
夜中に何?
俺は一先ず扉に掛けた手を離し、声がした右側に目を向けた。