天神学園高等部の奇怪な面々Ⅷ
月を先頭に、班員達は旅館の階段を駆け登る。

この暴風雨のせいで停電、エレベーターが停止していたのだ。

「か、階段はキツイですねっ…ぜぇはぁ…」

まだ二階までしか昇っていないのに、早くも秋帆が息を切らす。

「だらしないなぁ秋帆君、ほらっ!」

雛菊が秋帆の手を掴んで引っ張る。

「しかしこれは…最悪やな」

八鶴が窓の外の光景を見た。

斜めというより真横に叩きつけるように降る大粒の雨、轟く雷鳴、空に亀裂が入るかのように閃く稲妻。

夕闇のように暗くなった街の中を、突風で引き剥がされた看板が飛び、椰子の木が飛び、野良犬が飛び、土産物屋のオバチャンが飛ぶ。

絵に描いたような大嵐だ。

「こうしてられない、先行く」

野生児だけあって体力は班員で一番。

出麼が階段をダッシュで駆け登っていく。

「すんごい体力」

スポーツ万能な雛菊でさえも追いつけない。

「出麼さんに先行してもらいましょう。私達も急いで追いつきますよ」

月の言葉に、班員達は頷いた。

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