君のためにできること
俺達は、駅に行き、バスに乗った。


バスの中はクーラーがきいていて、とても涼しい。乗客は多く、目的は俺達と同じ、海だろう。


人々は笑い合い、楽しそうにそのバスの行き先に想いを馳せているように感じた。


だが、俺の心は逆に一方的に沈み、となりにいるなつきの会話もろくに聞いていなかった。


「ねえ、聞いてるの?」


「聞いてる」


「本当に聞いてる?」


「聞いてる」


なつきは、眉間にしわを寄せた。


「聞いてないじゃない!今日の髪型どうってさっきから言ってるじゃない。何で答えが聞いてるなのよ」


「・・・考え事してるんだ」


「またメールのこと?もういいじゃない。私は別に優が嘘ついてるとか思わないよ」


「ならいいけど、ね・・・」


俺は窓に目を向ける。遠くに海が見えている。


「海だ!」


なつきが窓を指差した。


たっぷり一時間かけて海に着いた。


バスを降り、海に向かい歩く。砂浜が太陽の熱で熱くなっていた。


「あっつーい」


「同じく」と、俺は呟いた。


目の前が汗であまりよく見えない。


ようやく、海水浴場に着いた頃は、体中から汗が流れていた。


「海に来たの久しぶりなんだ!」


砂浜から、駆け出すなつき。俺も慌てて後を追う。
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