君のためにできること
返答しない少女に俺は困り果てていた。


「君、名前は?」


少女は、「思念」、と言った。


「思念?」、と俺は訊きかえした。


「なつみだよ、私」


「なつみ?一体君は誰なんだ?」


少女の瞳が月の光に照らされる。


「正確に言えば、なつみの残留思念体。それが、私」


「・・・意味がわからないんだけど?」


「私は、なつみの残留思念が宿った人間。悲しみの人間。あなたを助けるべき存在」


少女は無言のまま部屋に入って来た。俺は、彼女の持つ異様なオーラに、身動き一つとれなかった。
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