最低王子と小悪魔女

 慎吾はふっと息を吐き、シュートフォームに入る。
 ゴールを見すえ、投げた。

 だが刹那、慎吾が顔をしかめ舌打ちをしたのをあたしは見逃さなかった。


 失敗したのだ。


慎吾の投げたボールは高くアーチを描くと、リングにぶつかってその縁をなぞって転がる。



 ――落ちるな!



 祈るように両手を握り締め、目を閉じる。

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