最低王子と小悪魔女

 そしてボールが地面を叩く音に、あたしはゆるゆると顔を上げてコートに視線を移した。

 慎吾と入れ替わりに、また時任君がフリースローライン前に立つ。
 シュートは決まったのだ。
 あたしは安堵して深く息を吐いた。


 ……あれ、なんであたし、ほっとしてるんだ?
 別に外れたって、慎吾が負けたって、どうでもよかったはずなのに。


 ふと、コートから戻る慎吾と目が合う。
 ごめん、と手を合わせて目を伏せる慎吾から、あたしはぱっと視線をそらした。

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