最低王子と小悪魔女

 投球のたびに苦しい。
 逃げ出したくて仕方がない。

 どうして止めなかったの、こんなこと何にもならないのに。
 誰もいい思いしたりしないって、最初からわかってたのに。


 止められたはずのあたし。
 過去のあたしを、止めなかった今のあたしが責めている。


「まだ、長引きそうだね」

「そう……ですね」


 どっちが勝っても苦しいの、それはとっくにわかってるんだから。
 だから早く、この時間を終わりにして欲しかった。

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