最低王子と小悪魔女
「そもそもさあ、ちょっと変わったからって、それでも付き合いが長いからわかるだろ? 俺が女の子を泣かせて喜ぶ奴かどうかぐらい。
あの時だって、他の誰が信じてくれなくても、波月なら俺を信じてくれると思ってたんだよ。
――でも、俺が馬鹿だった」
あたしは信じてあげなかった。
他人の言うことを鵜呑みにして、勝手に怒って慎吾を殴ってお説教した。
なのにあれは、全部誤解だったっていうの?
ならどうして、あの時否定しなかったの?
ただ一言そう言ってくれたなら、あたしはきっとそれを信じられたのに。
わからない。でも、そのことで慎吾がずっと傷ついていたこと。それだけは確かだった。