最低王子と小悪魔女

「嫌になるよ、ホントに。ここまで言ってもまだわかってないだろ? 波月」

「……え?」


 まだあたしは、何か見落としているのだろうか。

 鏡で見なくてもわかる、情けない顔をしているあたしに、慎吾はますます傷ついていくように思えた。


 こんなことは嫌なのに。傷つけたりなんか、したくなかったのに。


「もういい。よくわかった」


 諦めの目をして笑った。力なく、自嘲するように。
 ゆるゆるとあたしの腕を離して、慎吾は背中を向ける。

 呼び止めようと思えばいくらだって言葉はあるはずなのに、何も言えず立ち尽くすだけ。


 かすかに砂を踏む音がふと途切れた。

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