最低王子と小悪魔女
「――やっぱり、無理なんだな。幼なじみは。
立ち位置が近すぎるから、お互いのことがちゃんと見えなくなる」
「なんのこと……」
「もーいいよ。これ以上、波月を困らせたくないから」
思いのほか明るい口調で打ち切ると、慎吾は振り返った。
さっきまでのことが悪い夢だったみたいな、晴れやかないつもの笑顔で。
「けど、いきなりは無理かもしれないけど、また幼なじみやろうな。波月と一緒にいたいって気持ちは、今でも変わらないから」
『じゃあな』
慎吾はその言葉とあたしを残して、屋上から去って行ってしまった。
――初めてだった。
ひとりでいたくないと思う時、慎吾が隣にいてくれないのは。