最低王子と小悪魔女
やがて、一方的な罵倒が止んで、女の方が肩を怒らせてこちらに歩いてくる。とっさにドアと壁の間でやりすごし、やかましい足音が遠ざかってからあたしは屋上に出た。
「あれ、波月(ハルナ)。まだ残ってたんだ。ちょうどいいや、一緒に帰ろー」
ほっぺを片方赤くして、なんとのんびりした物言いか。
「あんたね、これで何人目? 一体何回殴られたら気がつくの、自分がどんだけサイテーなヤローだって」
あたしの知る限り、10人は下らない。そしてそれは絶賛増加中である。