最低王子と小悪魔女
信じてもくれない、話を聞いてさえくれない。
あの時は『んー、べつにー?』なんて最低な軽口で誤魔化したけど、地面と言わず天井と言わず、世界を支えてるすべてがガラガラ音を立てて壊れていく気さえしてたんだ。
おとぎ話のお姫様は、たいてい王子にかけられた魔法をキスか何かで解いてくれるのに。
まいっちゃうよな。俺のお姫様は、王子に悪い魔法をかけちゃうんだから。
この場合、一生魔法は解けないのかな、なんて他人事みたいに思ったりもした。
だって俺の生涯で、波月以外のお姫様が現れるわけがないんだから。
物心ついた時から、ずっと一緒。17年の人生全部に波月がいて、17年を丸ごと波月に捧げてたんだよ、俺は。
それなのにいまさら、他の女の子だなんて考えられない。
――考えたくもない。