最低王子と小悪魔女
「よっ、黒木。今帰りか?」
門にもたれていた時任君が、こちらを見てヒョイッと片手を上げた。
「時任君? なにしてるの、そんなとこで」
この時間なら、バスケ部はまだ余裕で練習時間だろう。
あの鬼キャプテンのことだ。とっぷりと日が暮れるまで、たっぷり練習に明け暮れているものだと思っていたけど。
時任君はやけに神妙な顔になりながら、目頭を押さえる。
「いや実はさ、うちのばあちゃんが危篤で」
「えっ、ウソ! じゃあこんなところでのんびりしてる暇なんて――」
言ってる途中で、時任君が肩を震わせながら、くつくつと笑いをこらえているのに気がついた。