最低王子と小悪魔女

「でも……それだけじゃないよね。時任君」

「……やっぱ、バレるよな。
そうだよ、違う。
おまえ、みんなに言いたい放題言わせてるけど、本当のことって誰にも喋ってないんだろ? それって辛くないか?」


 時任君の言うとおり、あたしは花那にさえ何も打ち明けていない。
 下手に知ってしまったら、必ず迷惑をかけることになるから。

 噂話と、『知りたい』という純粋な好奇心は厄介なもので、悪意がないから余計に人を痛めつける武器になる。

 追及の矛先が花那に向くようなことは出来ない。だから口を閉ざしたのだ。


「だから俺が聞いてやるよ……なんて言ったら卑怯だよな。
俺が知りたいっていうのもあるのに」


 決まり悪げにつぶやく。

 でも本当の卑怯者は、そんなことを口に出したりしないんだよ? 時任君。

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