最低王子と小悪魔女
「ありがとう。善意の方だけ、ありがたく受け取っておく。
……少し長い話になるけど、いい? 歩きながら話すよ」
「ああ、もちろん。黒木の話なら、たとえ夜通しでだって聞くさ」
時任君が眉を上げて言ったささいな冗談に、ちょっとだけ心が軽くなった。
こわばりが解けて、ようやく笑顔らしいものを浮かべることが出来る。
あたしはゆっくりと深呼吸して、はじまりの言葉を探した。
「うまく説明出来ないと思うけど……わかりにくいところがあったら言ってね」
「わかった、いいよ。ゆっくりでいいから。待ってる」
時任君は覚悟の表情になる。
――きっと彼は知ってるんだ。
これこそがあたしから時任君への、告白の返事になるんだってことを。