最低王子と小悪魔女
「だからその頃から、矢柴が黒木を好きだってのはわかってた。だからそんな矢柴が、噂どおりのことをしてるだなんて思いもしないだろ?
誤解かとも思ったけど……それが真実なら、なおのこと黒木をあいつには渡せない」
「でもそれは、あたしのせいだから」
「素直に言えばよかったことだろ? 『俺のことを信じてくれ』って。でも、それをせずに矢柴は逃げたんだ。
だからどうあっても、あいつのやったことを正当化することは出来ない。矢柴のしたことで、何人も泣いたことは事実だ」
そう、だと思う。自分の都合で、他人を傷付けた罪は重い。
でも慎吾は、いつでもどんな時でもあたしを信じてくれた。
そんなあたしが、しかも半分はあたしのせいでもあるのに、それを責めることなんて出来やしない。