最低王子と小悪魔女
11話 魔法が解ける時(後編)
家に帰ってから、あたしはずっと考えてた。ベッドに寝転がって、意味もなく天井の小さなシミを数えながら。
――本人じゃなきゃ、あんな風に素直に言えるんだけどな。
とてもじゃないけど、慎吾相手にああはいかないな。うん。
そもそも、今さら向き合って話をする関係でもないんだ。あたしたちは。
二人並んで、いつも同じ方向を――前を見て歩いてきたんだから。
ふと、窓ガラスを小突くようなささやかな音。気のせいかとも思ったけど、続いてもう一回。
――なんだ?
あたしはカーディガンを羽織って、恐る恐るベランダに近寄る。
カーテンを開けて外をのぞいても、当然黒一色の世界。
仕方がないので寒空の下に出てみると、どこからか呼び声が聞こえてくる。
それは聞き慣れに慣れ親しんだ、慎吾の声。