最低王子と小悪魔女
「おーい、はーるなー。ここだよ、ここー」
ぶんぶか手を振りながら、いかにも何にも考えてなさそーな顔してこちらを見上げている、ゴールデンレトリーバー……もとい、慎吾。
足下に視線を落とすと、ベランダには散らばった小石がバラバラと。
あいつ、これ全部投げつけてやがったな?
……あ、こんだけかかってよーやく気付いた、あたしもあたしか。
「ちょっと、割ったら弁償してよねー。
で、なに?」
「いや、なんか、こーいうのもいいかなって。ロミオとジュリエットっぽくない?」
制服の上着を脱いだ上に、ブルゾン羽織ったロミオ? ジュリエットに対して失礼じゃないか?
しかも、よく見たら髪が半乾きだ。湯冷めしても知らないからな。