最低王子と小悪魔女

 知ってる。そしてそれは、あたし自身が指摘したことでもあった。

 優しいから遠慮して、周りに気を遣い過ぎるから臆病になる。
 だから少し心配でもあったんだ。慎吾はずっと、そうやって何もかも諦めたり誰かに譲ったりするんじゃないかって。


「だけど俺、そんな風に波月まで諦めてしまうのは嫌だ。幼なじみのまんまで終わるのなんてまっぴらだ。
……だから、俺は自分が嫌いだった俺を、ようやく克服することにしたんだよ」

「ちょ、ちょっと……待ってよ!
あんたねぇっ! いきなりすぎるでしょーがっ! こっちにだって心の準備ってものが」

「身構えさせたら逃げるじゃん、波月。
当然、わざとに決まってるだろ?」


 あたしの苦情をサッと遮る慎吾。ニコニコの裏に、確実に含みがありそうなものをひそませて。

< 241 / 267 >

この作品をシェア

pagetop