最低王子と小悪魔女

 ベランダに到達したら、細い手すりに腰掛けて器用にバランスを保つ。そして落ちやしないかとハラハラしながら見守っていた、あたしに向けてニコリとしてみせた。
 大丈夫、ちゃんと登れたよって言うみたいに。


「最初に、ちゃんと謝っておくよ。
ごめんな、この間ひどいこと言って、傷つけて。……泣かせたんじゃないかって、後で死ぬほど後悔した」

「なに言ってるのよ。泣いてたのは自分じゃない」


 それに、後悔したのはあたしだって同じ。
 大きくなってすっかり泣き虫の名を返上した慎吾を、あたしのせいで泣かせてしまったんだ。
 そりゃ柱にガンガン頭をぶつけて後悔したよ。


「あはは、それもそうだ。
……なんかさ、失恋みたいだなって思って。告白もしてないのに、変な話だけど」

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