最低王子と小悪魔女

 あたしはあたしで、こんな抱き合った体勢でいるのが激しくこっ恥ずかしくて、気を紛らわすみたいに、思い付いたことをチクチクと指摘してやる。


「ていうか、そういやなんで風呂上がりに制服なのよ。あんたの家にはフツーの服がないわけ?」

「あ……いや、これは、急いでたから。服考える時間がもったいなかったし」

「髪だって濡れたまんま。風邪ひいても知らないからね」


 とはいえ、本当に風邪でもひかれた日には後味が悪い。
 せめて髪くらいは拭いた方がいいと思ったので、タオルを取りに行こうと身じろぎするけれど、慎吾はビクともしない。
 こらこら、こっちはあんたのためを思ってやってるっつーのに。
 

「ホントは明日にしようと思ってたんだ。もう夜も遅かったから。でも、一週間も会ってないんだって思ったら、いてもたってもいられなくて」

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