最低王子と小悪魔女

「……波月。ひとつ、お願いがあるんだけど」

「ん、なに?」


 ちょっとだけ身体を離して、見下ろしてくる慎吾の目は熱っぽい。
 早くも風邪の兆候? と思ったけど、それはあたしの大きな勘違いだった。

 風邪っぴきはこんな、お腹でよからぬことを考えていそーな笑顔は絶対にしない。


「お姫様がかけた魔法を、そろそろ解いて欲しいんだよね。最低王子の呪い。魔法を解く方法はたったひとつ。
――お姫様の、キスだけ」

「き、き……キスぅ!?」


 最低王子。
 確かにその二つ名には耳と良心が痛むところがある。
 あたしが元凶だと言われれば、それはまぎれもなく事実なのだから。責任を取れと要求されたら、従わざるを得ない。

 でも、急にそれはちょっと慎吾さん。心の準備というものがね?

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